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31話

2010年10月02日 02:02

ふおおおお・・・!?
く、9月中に一つも書き物を上げてなかっただとおおおお!?
ダウナーでも金欠でもなかったというのに!何たることか!

本当に来ていただいた皆さんに申し訳ないです。


で、今回なのですが・・・またしても終わりませんでした。(いや、終わったといえば終わったのか?)
別に引っ張っている訳じゃないんですけどね。
結論から言うと、「クイック書きにくい」なんだと思います。まる。

そういえば、話は変わりますがDASH3が出るそうで!!
いやぁめでたい!!久々にイナフネさんも明るい事おっしゃってて嬉しい限り。
そこここでDASH3を待ち続けて、声を上げ続けた人たちがいたからこそだよなぁ。

メガミ+ギガミ復刊発行といい、DASH3といい、こういう風に、作る側の都合で作られたものしか店頭に並ばない(買えない)のではなく、買う側からの後押しで商品が作られていくっていうのは、何だかとても胸が熱くなりますな。

まあそんなのはどうでもよいですかそうですか。
では久しぶりに、「続きからドウゾ」など言ってみたりして。



***


初音ミクは焦っていた。

最初は一気に半周近い差をつけられたが、どうにかしてクイックマンに追いつく所までは来られた。
はるか遠くに思えていたクイックマンの車のテールランプがすぐ目の前に迫る。
だがその後は中々前に出る事ができず手をこまねいているばかりであった。
さすがは自分からレースでの勝負を持ち出してくるだけあって、「強い」というより他ない。

だがミクだって負けるわけにはいかない。一瞬だけ、ちらりと目線を上げて空を見た。
もう日付が変わってから数時間は経っている。今だ辺りは真っ暗だったが、それでも確実に夜明けが近づいてくる気配がしていた。闇が青い。

こんな所で時間をとられている暇はないのに、とミクは歯噛みする。
夜明けまでに何とかロックを見つけて逃げ出さなければここは爆撃される。
もしそうなってしまったら自分だって命がない。何せ自分がここにいる事を知っているのは手引きをしてくれたDRNの面々だけなのだから。

そこまで考えた所で、ミクは不意にどきりとした。

(その時はこのヒト達も死んじゃうのかな)

それはそうだろう。むしろロックがワイリーの手先にされるのを防ぐというのは目的の半分くらいで、残りの半分は再び戦闘用のロボット達を作って力をつけるのを先回りして叩いておこうという所だろう。
その中で、もしワイリーが本当にここにいて命を落としたりしたら、それこそ政府にとっては願ったりな事に違いない。でも。

(でも、本当にそれでいいのかな・・・?)

何だか釈然としない感情がミクの胸をよぎる。
無論、ミクとしても彼らの事が憎くないわけじゃない。
彼らの所為で故郷のロボットの町は大きなダメージを受けたし、顔なじみや常連のロボットも沢山犠牲になった。さらには自分の初めての大舞台も潰され、挙句の果てにはロックまで。

沢山の悲しい思いがミクの中に蘇るが、それでも彼らが殲滅される事への違和感は消えない。
それは、彼らが本質的には自分達と同じである事を知ってしまったからかも知れない。
たとえ歩み寄る事はできなかったとしても。

(ううん、今はよそう。・・・今はとにかくレースに集中しなきゃ)

ミクはもやもやとした思いを振り払うかのように頭を振ると、前方に見えるクイックマンの後頭部を睨みつけた。

***

先ほどより最終ラップに突入した2台の車は、更にスピードを上げていく。
絡み合うかのように4本のヘッドライトが右へ左へと流れていった。

相変わらずクイックマンは、隙を見ては前に出ようとするミクの動きを完全に抑え込んでいた。
前4週に渡って丁寧かつ念入りに砕かれ、最早砂利道としか言いようのなくなった悪路を物ともせずに華麗なハンドル捌きを見せてくれる。
ミクにとってはまったく嬉しくない事だ。

(う・・・うう、どうしよう、このままじゃ、ま、負けちゃう・・・!)

相変わらずの強烈なGに振り回されながらも、ミクは何とかこの状況を打開する方法を考えていた。
弟が貸してくれた力は善戦してくれたが、元々の土台である自分の力が足りなさ過ぎるのかマシンの性能の差が大きすぎるのか、後一歩の押しが足りない。
何故か途中からクイックマンが減速していったので追いつくことは出来たものの、腕前が違いすぎて最早普通の方法ではどうしようもなくなっていた。

ぴったりとクイックマンの後ろにくっつきながら、ミクは必死に考える。

歌は・・・無理だ、こんな状態じゃ。そもそも歯を食いしばりすぎていて口も喉もまともに開かない。
一か八か本当にロードローラーをぶつけてやろうかとも思ったが、このスピードだ。
実際にぶつかった際には、きっと自分も無傷では済まないだろう。
このレースに勝たなければ文字通り明日は無いけれど、それで勝っても自分が動けなくなってしまったら結局は同じ事になってしまう。

(でもでも、後できる事って何がある? 歌はダメ、ぶつかるのは危ないし、後は・・・・きゃっ!)

普通に追い抜く事以外の方法も考えながらも、ミクの手足は追い抜くことを諦めてはいなかった。
今の悲鳴は、追い抜こうとした際の加速に踏ん張った足がずるっと滑って、計器の土台部分にぶつかったためだった。
衝撃で計器の下部についていた物入れがバコッと音を立てて開く。

ああもう、また開いた。

ミクは手を離せるタイミングを見計らって、ひっぱたくようにして物入れを閉めた。
どうやら扉の閉まりが悪いらしく、今までの周回でも何度か衝撃の度に開いてしまっていたのだが、その度ごとに邪魔になるので閉めていたのだ。

物入れを閉めた手をハンドルへと引き戻す途中で、ミクの中に何かがひらめいた。

(ん? 待って、今何か・・・)

ミクは再びタイミングを見計らうと、今度は自分で物入れを開けて中を覗いた。
入っていたのはマニュアルらしき分厚い本と何かの缶。
何の缶かは分からないが、持ってみると未開封なのが分かった。誰かが隠しておいたものだろうか?

ミクは前を走る車の様子をうかがった。クイックマンは相変わらず巧みに進路を妨害しており、当然だが譲ってくれる気配は無い。

(・・・だったら、これでどうよ!)
ミクは掴んだ缶を大きく振りかぶると、前を行く車を目掛けて思いっきりぶん投げた。

***

ドゴン!!

「うおっ!?」

突然響いた音に、クイックマンは思わず驚いた声を上げた。
何か、割と重さのある物が車の屋根に当たったらしい。
その何かは跳ね返ってボンネットに当たると、もう一度ゴン!と音を立てて辺りの闇へと紛れてしまった。

な、何だ今のは?
クイックマンは一瞬だけ視界を掠めた物音の主を大急ぎで解析した。その結果は。

「缶?」

缶だ。どう見ても缶。やや大きめの飲み物の缶だった。どこからそんなものが飛んできたのか。

(いや、どこからなんてのは分かりきっているんだけどよ)

クイックマンがミラーを確認すると、案の定そこには何かを振りかぶった体勢の髪の長い女の姿が映っていた。再び屋根に物が当たる音がする。

全く前に出るチャンスの無いこの状況に相当焦っているらしい。
最早形振り構っていられなくなったのだろう。最初の缶の後も間をおかずに次々と物が飛んできてはドカン、バコンと盛大な音を響かせていた。

(・・・てか、うるせえ)

クイックマンは次々と投げつけられる物の立てる音にも動揺を見せず、相変わらず隙の無い冷静なハンドル捌きを見せていたが、内心では次第に苛立ちを感じ始めていた。
なまじ高性能な目を持つがために、飛んできたものが見えてしまうのも苛立ちの原因の一つだった。
今まで見えたものだけでも、缶・マニュアル・発炎筒・小型の消火器と、ロードローラーの備品を手当たり次第に投げてきているのが分かった。

(勝てそうにねえからって物投げつけるなんざ、一体あの女のAIはいくつに設定されてんだよ!)

物を投げても届かないよう引き離してしまいたい所だったが、この悪路だ。
もう少し、せめて最後の直線に入るまでスパートをかけるのは我慢しなければならない。
引き離したくとも引き離せない、かといって前を空けてやるのは問題外の手詰まり感に、クイックマンはつのる苛々を吐き出すように強く息を吐いた。

と、その時、ふと音が途絶えた事に気づいた。
ミラー越しに後ろを見やると、例の女がきょろきょろと忙しなく運転席の中を見回していた。
どうやら投げるものが尽きたらしい。焦りに拍車がかかるのが見て取れる。

そろそろレースも最後のストレートに差し掛かかりゴールは目の前。最早打つ手はない。
もうここまで来たら、路面の心配をする必要も無いだろう。

クイックマンとしては、このレースは最大限に譲歩した結果だったのだ。
あの女としても、これが自分の実力なのだと諦めて大人しくせざるを得ないだろう。

(もういいだろう、ここで一気に勝負を決めてやる)

クイックマンはグン、と一際強くアクセルを踏み込んだ。

***

「いやあああああああっ! ダメええええええええ!!」

前を行く車のブースターに火が灯るのを見て、ミクは思わず絶叫した。

何とか、何とかしなくては。
ミクは無我夢中で指先に触れた「それ」をぶん投げた。
無我夢中で投げたせいかクイックマンの車にはぶつからず、細長い「それ」はクルクルと回転しながら車の上を飛んでいく。

ブースターが火を噴く直前、クイックマンの目は落ちて行く「それ」の姿を捉えた。
白く、長細いものが、クルクルと回転しながら目の前に落ちていくのがストップモーションのように連続する。
先端はやや緑で二股に分かれ、中ほどからヘの字に折れた「それ」は。
「それ」は、あの、自分の腕を叩いた、白い、ネ・・・

ずるっ

次の瞬間、着火したブースターが勢いよく火を噴き、クイックマンの乗った車はその勢いのまま激しくスリップして90度真横を向いていた。

もし、走っていたのがクイックマンだけであったなら、その高度な運転技術によって、スピンする車を立て直す事が出来たかも知れない。
もしくは驚異的なスピードを誇るその身体能力によって、制御不能な車から脱出する事が出来たかも知れない。

だがしかし彼にとって運の無い事に、この時後ろにはぴったりとロードローラーがついていた。
ほぼ反対向きまで回転したクイックマンの視界を、ロードローラーの巨大なライトが真っ白に染める。

「うわあああああ!!」
「きゃあああああ!!」

ドガッシャァン!!!
巨大な雷が落ちたような凄まじい音を立て、二台の車が激しく衝突した。
重量で勝るロードローラーがつっぱる様に前の車を押しながら惰性で進む。

そしてその上空を、慣性によって放り出されたミクが背面跳びの要領ですっ飛んでいった。



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